深刻な介護人材不足への対策として、訪問介護サービスでの外国人就労が解禁された。政府は2025年4月から、外国人技能実習生および特定技能の在留資格を持つ外国人介護士について、介護保険の訪問系サービスに従事することを認める方針を正式決定した​。これまで外国人の介護職は施設勤務に限られていたが、新年度より在宅での訪問介護分野にも門戸が開かれることになる。

解禁の対象となるのは、日本で介護の技能実習や特定技能としてすでに働いている外国人だ。ただし誰も彼も訪問介護に就けるわけではなく、一定の条件が課されている。具体的には「介護施設等で1年以上の実務経験があること」が前提条件となっている​。加えて、訪問系サービスを提供する事業所側にも体制整備の義務が生じる。外国人介護士が安心してサービス提供できるよう、必要な研修や訓練の実施、スキルアップのための計画策定、相談窓口の設置などを事業所に対して求めている​。受け入れる現場がしっかりサポートすることで、利用者へのサービス品質を確保する狙いがある。

今回の措置の背景には、介護現場の人手不足が一段と深刻化している事情がある。日本の介護分野で働く外国人人材は2022年時点で約5万5千人に上り、年々増加傾向にある​。経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補者や技能実習制度、特定技能制度などを通じて、多くの外国人が介護職として活躍してきた。しかし従来は施設系サービスが中心で、訪問介護への従事は認められていなかった。団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる「2025年問題」を目前に控え、在宅サービスの需要増に対応するためには、訪問介護分野にも人材を拡充する必要があると判断された。

実際、介護の現場では外国人材への期待が高まっている。厚生労働省の推計では、2040年には介護職員が約55万人も不足する恐れがあるとされ​、国内人材だけで需要を満たすのは困難だ。外国人介護士は言語や文化の壁といった課題も指摘されるものの、真面目で熱心な働きぶりで現場を支えているケースが多い。特に技能実習や特定技能で来日する人々は母国で介護の志を持ち、日本で経験を積んでいる。こうした人材が訪問介護にも活躍の場を広げることで、利用者に対するきめ細やかなサービス提供と、人手不足緩和の双方に寄与することが期待されている。

もっとも、制度拡大にあたっては課題も残る。訪問介護は利用者宅で1対1のケアを行うため、言葉の通じにくさがコミュニケーション上の支障となる懸念がある。また夜間帯の対応など、施設勤務よりも自律的な判断が求められる場面も多い。政府は外国人介護士に対して一定水準の日本語能力や介護スキルを求めており、事業所側にも十分な研修を義務付けることでサービスの質を担保したい考えだ。

外国人の訪問介護解禁は、慢性的な人材不足に悩む介護業界にとって大きな転機となるだろう。一方で、利用者や家族に安心してサービスを受けてもらうには、外国人介護士への教育支援やフォロー体制の充実が不可欠だ。現場の声を聞きながら制度を運用し、日本人スタッフと外国人スタッフが協働して質の高いケアを提供できる体制づくりが求められる。国は引き続き介護人材の確保策を総合的に講じる方針で、外国人材の活用もその重要な柱の一つとなっている。

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