親や配偶者の介護が始まると、まず直面するのが「お金の不安」である。介護には想像以上の費用がかかるが、実は公的制度を活用することで、自己負担を抑える仕組みが多数用意されている。

厚生労働省「介護保険制度の概要」(令和6年4月)によれば、介護保険サービスの自己負担は原則1割で、一定所得以上の人でも2〜3割で済む。また、要介護認定を受けていれば、月に最大数十万円分の介護サービスが使えるが、利用者が実際に払うのはその1〜3割である。デイサービスや訪問介護、ショートステイ、福祉用具レンタルなどを適切に組み合わせることで、無駄なく介護生活を送ることが可能となる。

しかし、介護が長期化すれば出費もかさむ。そこで重要になるのが「高額介護サービス費」である。これは、自己負担額が一定額を超えたとき、超過分を払い戻してくれる制度である。例えば、厚生労働省「介護給付費実態調査」(令和5年度)によると、一般所得の人では月額上限が44,400円とされており、それ以上の利用料は後日返金される。市区町村へ申請すれば自動的に返還される場合もあるが、自分から申請が必要な自治体もあるため、確認が欠かせない。

また、介護に必要な住宅改修や福祉用具購入には、20万円までの改修に対して9割(または7〜8割)が補助される制度がある。これも介護保険の一部で、事前に申請しておく必要がある。たとえば、手すりの取り付けや段差の解消、和式トイレの洋式化などは、費用の負担が大きいため、制度を使えば大きな経済的支援となる。

一方、介護を理由に離職や休職を考える人も多い。もし被用者保険に加入していれば、「介護休業給付金」を受け取れる可能性がある。厚生労働省「雇用保険制度の概要」(令和6年)によると、最長93日間、休業前の賃金の67%が支給される仕組みになっている。短期間ではあるが、この間に介護体制を整えるなどして生活の安定を図ることができる。

また、介護者や要介護者の医療費が高額になった場合には、「高額療養費制度」もある。これは医療費が1か月あたり一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度で、介護保険とは別に健康保険でカバーされる。

さらに、所得税や住民税の控除も忘れてはならない。例えば、特別障害者控除、扶養控除、医療費控除などをうまく活用することで、年間の税負担を軽減することができる。確定申告の際にしっかりと申請し、少しでも負担を軽くしたい。

介護に関する支出は避けがたいが、こうした制度を組み合わせて利用することで、支出を最小限に抑えられる。お金のことを早めに調べ、使える制度を把握しておくことが、介護生活を経済的に乗り切る第一歩である。

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