経済産業省が2023年3月24日に公表した「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業」(調査:株式会社日本総合研究所)によると、高齢化の進行とともに、仕事と家族の介護を両立する「ビジネスケアラー」の数が増加している。

介護離職者は年間約10万人に上り、ビジネスケアラーの割合は今後さらに増加し、2030年にはケアラーのうち約4割(約318万人)がビジネスケアラーとなると予想されている。これにより、2030年には経済損失が約9.1兆円となると推測されている。特に、労働生産性の損失が大きな割合を占めるとの結果が出ている。

介護と仕事の両立についてのアンケート調査では、介護しながら仕事を続けることが長期的に、あるいはしばらくは可能であるとの回答が74.5%と高い一方で、続けられないと回答した人は12.6%に上った。続けられない理由としては、勤務先に介護休業制度等の両立支援制度が整備されていないためや、家族・親族の理解・協力が十分に得られないため、また、収入減少を理由に介護休業制度等の利用ができないためなどが挙げられた。

このような課題を解決するためには、制度的な支援の持続性の向上とともに、公的保険に代わる新たな受け皿の形成が必要とされている。ビジネスケアラーの増加と経済損失の拡大を防ぐためには、企業における両立支援制度の整備や家族・親族の理解と協力、そして公的な支援制度の拡充が求められている。