厚生労働省は、令和5年5月に「介護認定審査会の簡素化に関する取組事例の周知について」の文書を全国の自治体に通達しています。これは、各自治体が介護認定審査会の簡素化に向けてどのような取り組みを行っているのか、その成果と課題を明らかにしたものです。
介護認定とは、高齢者が必要とする介護の程度を評価し、介護保険のサービスを適切に提供するための制度です。主治医の意見書と認定調査票を基に、介護認定審査会が総合的な判断を行い、適正かつ公平な審査を通じて介護の必要度を決定します。
厚労省の資料によると、簡素化による効果は、審査時間の短縮や認定に要する期間の短縮、審査会回数の減少、審査会委員の負担軽減などが挙げられました。また、審査会がスムーズに進行しているとの声もある一方で、一覧表のみでは判定の信頼性が不明確との意見も寄せられています。
さらに、簡素化の導入により通常審査の件数が減り、審査会の開催回数が減少。これにより、審査会資料の事前送付を1週間短縮することができ、申請から認定までの期間も短縮された例もありました。しかし、簡素化導入による事務負担軽減は必ずしも達成されておらず、通常審査と簡素化対象者の仕分けに伴う事務負担や資料の事前確認は通常審査と同様に行われていることから、事前準備には手間がかかるとの声もあります。
これらの課題を克服するための施策を模索する中で、厚生労働省は今後、介護認定審査会の簡素化についての課題や改善策についてのさらなるヒアリングや調査を進める予定だといいます。
介護認定審査会の簡素化は、高齢者の増加に伴う介護需要の高まりと、それに対応する社会保障制度の適正運用を目指す重要な取り組みです。しかし、その実施には自治体ごとの独自ルールや事前準備の手間など、未だに解決すべき課題が残っています。
本取り組みにより明らかになった課題の一つに、審査の信頼性に関する疑問があります。一覧表だけでは判定の信頼性がわからないという意見が審査会委員から寄せられており、その改善が求められています。
また、簡素化対象者の選定にあたっては独自のルールを設ける自治体もあり、その結果として対象者が増えないという問題も報告されています。
厚生労働省は、これらの課題を把握し、改善策を模索しています。介護認定審査会の簡素化は、高齢者への適切なサービス提供と介護保険制度の持続可能性を確保するための重要な課題であり、今後もその取り組みが注目されることでしょう。