厚生労働省が発表した「令和3年度介護保険事業状況報告」によると、日本の介護保険事業の現状が幾つかの複雑なトレンドを明らかにしている。報告書は、市町村等からの保険者報告数値を全国集計したもので、介護保険の現状と今後の課題を浮き彫りにする重要なデータとなっている。

報告書によれば、令和3年度末の第1号被保険者の世帯数は前年度比で11万世帯(0.4%)増の2,538万世帯となっている。また、第1号被保険者数は総数で3,589万人となり、前期高齢者(65歳以上75歳未満)が1,715万人、後期高齢者(75歳以上)が1,873万人を占めており、後期高齢者の増加率が前期高齢者の減少率を上回る形で全体的に増加している。特に後期高齢者の増加率は2.2%となっており、この数値は今後の介護サービス供給における重要な指標となりそうだ。

さらに、要介護(要支援)認定者数も増加しており、認定者数は690万人で、その大部分を第1号被保険者が占めている。この中でも、85歳以上の高齢者が特に多く、特に女性の数が目立って多い状況が示されている。このデータは、高齢者の介護ニーズが増加していることを示しており、今後の介護事業の拡充が必要となる可能性を示唆している。

経済的な側面では、保険給付の費用額と給付費が共に増加していることが示されている。令和3年度の保険給付(介護給付・予防給付)の費用額は、前年度比で2.1%増の11兆2,838億円となっており、給付費も2.0%増の10兆4,317億円となっている。また、第1号被保険者1人あたりの給付費は1.7%増の291千円となっている。この給付費の増加は、高齢者数の増加とともに、介護ニーズの増加を反映しているものと思われる。

これらのデータから見えてくるのは、日本の高齢者社会が急速に進行しているという事実と、それに伴う介護ニーズの増加という課題だ。後期高齢者の増加や給付費の上昇は、今後の介護事業の拡充と資源配分の調整が不可避であることを示している。また、女性の高齢者が特に多いことから、女性特有の介護ニーズに焦点を当てたサービスの開発も求められるだろう。

今後の介護保険事業の展開においては、これらのデータを基に、効果的なサービス提供と資源配分を図ることが重要となる。そして、高齢者一人ひとりが質の高い介護サービスを受けられる社会を目指すべく、政府と地域社会が連携して取り組むことが求められるだろう。