2022年、介護事業者の休廃業・解散が過去最多の495件(前年比15.6%増)を記録し、倒産も最多の143件に上ったことが、東京商工リサーチの調査で今年1月に明らかになりました。さらに、物価や光熱費の高騰が介護業界に大きな影響を与えており、一般社団法人介護人材政策研究会、全国介護事業者協議会、日本在宅介護協会が今年4月に発表した調査によると、回答した1270余りの介護施設や事業所のうち、約3割が事業の廃止や倒産の可能性があると回答しています。

調査結果では、ガス代、水道代、ガソリン・車両費、食材費、消耗品(介護用品・衛生用品)、消耗品(事務用品)、人件費など、多岐にわたる項目でコストが上昇していることが明らかになっています。これらの要因が、すでに厳しい経営環境下にある介護事業者にさらなる負担を与えており、2023年には休廃業・解散がさらに増加する可能性が高まっています。

コロナ禍による支援効果の薄れや利用者数の回復遅れも経営を圧迫し、高齢化社会が本格化する中で介護事業者の経営力強化が求められています。しかし、コロナ禍で資金面を含めた体力が疲弊している小・零細事業者も多く、コロナ関連支援の縮小が進む中、2023年には休廃業・解散がさらに増加する可能性が高まっています。

倒産と休廃業・解散は負債の返済の可否が鍵を握るが、2022年に休廃業・解散した事業者の中には、2023年に倒産へ移行する可能性もある。介護事業者の苦境は、家族を含めて誰もが“介護難民”に直面する可能性を示唆しています。

このような状況を受けて、国や自治体は資金繰りや職員の処遇改善、生産性向上などの支援を検討すべきです。しかし、支援が薄まると、経営再建が見込めない介護事業者も多く、2023年は休廃業・解散がさらに増勢を強める可能性があります。

2024年度には介護報酬の改定が予定されていますが、大幅なプラス改定は期待できず、今後も介護事業者の経営環境は厳しい状況が続くと予想されます。このような中で、介護事業者は経営効率化や新たなサービスの開発、地域との連携強化など、様々な取り組みを進めることが求められます。

また、政府や地方自治体は、介護事業者への支援策を見直し、事業者が持続可能な経営ができるような環境整備に努めるべきです。具体的には、資金繰りの支援や人材育成、働き方改革の推進、介護技術の普及・研究支援などが挙げられます。