リースバックという取引手法が、高齢者を中心に注目を集めています。これは、自己が所有している資産を第三者に売却し、その後、第三者とリース契約を結ぶことで、元の資産を利用し続けることを可能にする方法です。特に住宅のリースバックは、老後の資金確保や相続前の不動産処分など、多様なニーズに対応できる手法として広がりを見せています。

国土交通省の資料によると、高齢者世帯を中心にリースバックの利用が増加傾向にあります。住み替え、老後資金の確保、円滑な相続等を目的とした不動産取引が増えており、多様なライフスタイルの実現や既存住宅流通市場の活性化、空き家の発生の未然防止につながることが期待されています。

リースバックの利点としては、自宅を売却してもそのまま住み続けることができ、住宅ローンを早期に完済できる点が挙げられます。また、まとまった資金が得られるため、老後資金の確保や相続前の不動産処分、借入金の返済資金確保などのニーズに対応できます。

しかし、リースバックにはデメリットや注意点も存在します。まず、家賃の支払いが発生します。固定資産税や住宅ローンの支払いが不要になりますが、リース料として家賃を滞りなく支払う必要があります。売却額に応じて家賃が定められますが、それは同じ地域での同等の家やマンションの家賃相場よりも高くなることもあります。

また、売却価格が市場価格よりも安くなる可能性があります。リースバックでの売却価格は、市場価格の60~80%程度とされています。これは価格の計算時に期待利回りが算入されるためで、業者によって買取価格が大きく変わることがあります。

さらに、リースバック自体の認知度が低いことことや、一連の手続が複雑であることから、契約内容について消費者の理解が不十分なまま契約が締結されるなどのトラブルが発生していると国土交通省は指摘しています。

特に高齢者がリースバックを利用する際には、以下の点に注意する必要があります。

  1. 勧誘への注意:長時間の勧誘や誤った情報に基づく勧誘には注意が必要です。契約は自分が理解して納得した上で結ぶべきです。
  2. 家族や信頼できる第三者との相談:判断能力が衰えている場合や、契約内容が理解しにくい場合には、家族や信頼できる専門家に相談することが重要です。
  3. 実績のある業者を選ぶ:リースバックは複雑な手続きが伴います。詐欺などの被害を避けるため、実績のある大手業者を選ぶことをおすすめします。

リースバックは、自己の資産を有効に活用する一つの手法として有用ですが、契約に際しては十分な理解と注意が求められます。特に高齢者の利用者は、上述の注意点を頭に入れ、慎重に進めることが必要です。