入居金0円を謳う老人ホームが増えていますが、安さだけに目を奪われず、カラクリや注意点を理解することが大切です。

  1. 入居金や月額費用の比較

入居金が低額であることをウリにする老人ホームを多く見かけますが、その分、月額費用が高くなる場合がほとんどです。例えば、入居金が800万円で、家賃が9万円、食費が7万円のAホームと、入居金が0円で、家賃が14万円、食費が7万円のBホームがあるとしましょう。

Aホームでは、初期費用が高いものの、月額費用が抑えられます。また、Aホームでは、長期滞在者向けに、一定期間の入居金を一括で支払うことで、家賃を8万円に抑えるプランが提供されているとします。この場合、初期費用は高くなりますが、月々の支払いがさらに抑えられます。

逆に、Bホームでは初期費用が0円ですが、月額費用が高くなります。しかし、Bホームでは、短期滞在者向けに、入居金を分割払いにすることで、月々の家賃が13万円に抑えられるプランが提供されているとします。この場合、初期費用は抑えられますが、月々の支払いが高くなります。

どのようなプランが提供されているかを比較検討しましょう。

  1. 契約書や初期償却に注意

初期償却とは、入居時に一定額をホーム側が売り上げとして回収し、その金額が返金されない仕組みになっている場合があります。例えば、入居金が1000万円で、初期償却率が30%、5年間の償却期間が設定されている場合、ホーム側は入居時に300万円を取り、残りの700万円を5年間かけて売り上げとして計上します。

契約書には、初期償却率や償却期間が記載されていますので、入居前に確認しましょう。初期償却率が高く、償却期間が短いほど、ホーム側の売り上げが上がりますが、入居者やその家族にとっては、返金される金額が少なくなるため、注意が必要です。

  1. 介護サービスなどで「囲い込まれる」

安い老人ホームでは、家賃や食費を抑えて入居者を集める一方で、併設の介護サービスをたくさん利用してもらうことで利益を出す仕組みをとっているケースがよくあります。例えば自社の介護サービスの利用を強く勧められる場合や、関連会社や提携企業の介護サービスの利用を勧められるケースはよくあります。そのため、介護サービスの利用計画や費用を事前に確認し、総額の負担を把握しておくことが重要です。

例えば、Aホームでは、基本的な介護サービスが月額2万円で提供されているが、Bホームでは、同じサービスが月額3万円で提供されている場合、総額の負担が大きく異なります。介護サービスの違いを比較して、適切なホームを選ぶことが重要です。

  1. 遺族や退去者とのトラブルを避けるために

入居金の償却を巡っては、遺族や退去者とホームの間でトラブルが続出しています。そのため、入居前に契約書をよく確認し、返金条件や手続きを理解しておくことが大切です。また、入居後も定期的に契約内容を見直すことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

安い老人ホームには、魅力的なプランが提供されていることが多いですが、カラクリや注意点を理解しておくことが重要です。入居金や月額費用、介護サービスの利用計画や費用、契約書の内容を慎重に確認し、適切なホームを選びましょう。