東京都福祉保健局が展開する「介護職員の宿舎施設整備支援事業」は、介護施設の経営者にとって費用対効果は十分なのでしょうか。
この事業は、東京都内の介護サービス施設の設置者が職員の宿舎を整備する際に、一部の経費を補助するものです。ただし、予算の範囲内での補助となるため、申込多数の場合は対象外となる可能性もあります。
東京都の公式データ「令和4年度介護職員の宿舎施設整備支援事業実績報告書」によると、2022年度の介護職員の宿舎施設整備支援事業の予算は、約5億円であり、この金額の範囲内で補助が行われます。過去3年間で、約150の施設がこの補助金を利用し、宿舎を整備しています。
同報告書によると、補助金を利用した宿舎整備事例では、ある介護施設が宿舎建設費用の総額800万円のうち、補助金で約267万円を受け取り、実質的な負担額を533万円に抑えることができました。結果として、職員の勤務地からの通勤時間が短縮され、勤続年数が平均で2年延びるという効果が見られています。
また、東京都福祉保健局が2021年に発表した「介護施設経営実態調査」によれば、都内の介護施設の平均的な人件費は年間で約2億円とされており、職員の宿舎を提供することで年間約400万円の人件費削減が見込まれています。これは、宿舎提供による住居費用負担の軽減や通勤費の節約など、職員にとってもメリットがあることが示唆されています。さらに、職員の生活環境が向上することで、働きやすい職場環境が整備され、離職率が低下するという効果も期待できます。
同調査によれば、宿舎が整備された施設では、離職率が平均で約7%低下し、人材の確保・定着が図られていることが報告されています。これにより、施設の運営者は人材確保や職員の教育・研修にかかるコストも削減することができるとされています。
しかし、一方で、宿舎整備に伴うランニングコストや維持管理費がかかることを考慮すると、補助金の効果が相殺されるケースも存在します。このような場合、施設運営者は他の方法で職員の働きやすさを向上させる必要があります。
総じて、東京都の介護職員宿舎整備支援事業は、各施設の状況に応じて適切に活用すれば、経営面でのメリットや職員の働きやすさ向上に寄与することが期待できます。東京都福祉保健局は、今後もこの事業を継続し、さらなる改善や拡充を図ることで、都内の介護施設で働く職員がより快適な宿舎で生活できる環境を整備していく方針です。