東京商工リサーチによると、新型コロナウイルスの影響や物価高騰が続く中、2022年の老人福祉・介護事業の倒産は介護保険制度が始まった2000年以降で最多の143件(前年比76.5%増)を記録しています。新型コロナ関連の倒産は前年比で5.7倍に増加し、63件に達しましたが、一部の専門家によれば、今年度も倒産件数は高水準で推移する可能性を指摘する声もあります。

特に厳しい状況に直面しているのは、訪問介護事業者です。経営環境は近年ますます厳しさを増しており、物価高騰に伴う経営負担の増加と人員確保の難しさが、事業の存続を難しくしています。

介護報酬によるサービス料金が固定されている一方で、光熱費や食材などの価格上昇を転嫁できず、その結果、経営は急速に悪化。新型コロナウイルスによる支援の縮小も相まって、経営難に陥った事業所が増えています。

新規事例として、訪問介護事業を展開するある事業者が、負債総額約4800万円の負担のもと、事業継続を断念しました。2011年に設立され、一時期は年間売上高4500万円を達成していたこの事業者も、介護職員の退職が相次ぎ、新規の受け入れができず、売上は2022年には3200万円まで落ち込みました。

このような事例を踏まえると、介護業界全体の経営環境が厳しさを増していることが伺えます。特に、物価上昇による経営負担の増加と労働力の不足が、介護事業の倒産を加速させていると言えます。

今後、介護業界は労働環境の改善や適切な価格設定、さらには新型コロナウイルスの影響に対応するための具体的な対策を検討する必要があります。また、政府には介護業界を支援するための具体的な施策を提供し、継続的なサービス提供を支える役割が求められています。