超高齢化社会を迎えた我が国の介護業界では、人材確保が課題となっています。事業者側の採用力が限界に達している現状から、人材紹介会社への依存が増しています。しかし、その結果として経営を圧迫する高額な紹介手数料が問題となっています。

例えば、青森県の介護事業所によると、1人の採用につき60万〜120万円の手数料が発生しており、その費用が年間には1300万円にも上る事例が出ています(2023年6月7日の東奥日報より)。関西のある介護施設の責任者は「介護職1人を雇うのに仲介会社に100万円を支払うのが近年の相場」だと話しました。

また、東京都高齢者福祉施設協議会が2022年6月〜9月に実施した調査では、特別養護老人ホーム(特養)が人材派遣や職業紹介の会社に払う総額が最大で年間約1億円にのぼると報告されています。

この状況は、介護現場の慢性的な人手不足が背景にありますが、その解決策としての人材紹介会社の利用が恒常化し、高額な経費が経営を圧迫する事態を生み出しています。これは公費(税金)と保険料から賄われるはずの介護職員の給与が、人材紹介会社の手数料に流れてしまっているという現実を示しています。

これに対し、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は2023年5月11日に開かれた会議で、介護事業者向けの人材紹介会社に対する規制を強化する提起を行いました。その中には、手数料の水準の設定や就職お祝い金の規制の徹底が含まれています。

また、紹介会社を介した介護職員の離職率が高いことから、安定した人材確保につながっていないとの指摘がありました。これに対して、公的な人材紹介機関の強化が求められています。